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季節は流れ、あの人が一番好きだといった金木犀の花が咲き、甘い香が町中に広がる頃。
いつもと同じく、学校帰りに店によった時。
『私ね、結婚するの』
いつもより美しい、ほほ笑みと頬をバラ色に染めながら、あの人は言った。
僕は、その言葉にズキリと胸が痛んだ。
聞きたくない……。
しかし、僕の気持ちを知らない、その人は、結婚するという相手のことを話しだした。
勤め先の同僚で、とても優しく、そして力強い、ヒマワリのような人だという。
だが僕は、その話を半分ぐらいしか聞いていなかった。
いつか、こんな日が来るとは思っていた。
だが、実際に来てみるとショックは大きかった。
それでも僕は必死に笑顔で、あの人に祝福の言葉をかけた。
『オメデトウゴザイマス』
その人は、さらに美しく笑って『ありがとう』と答えた。
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