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気が付くと、自室のベッドの上に寝そべっていた。
『オメデトウゴザイマス』とは言ったものの、素直に喜べない自分に、なんて器の小さな男だと自己嫌悪した。
自己嫌悪のあとに押し寄せるのは後悔。
なぜ告白しなかったのだろう…………。
そんな事ばかり思ってしまう。
断られたとしても、告白していたなら、こんな気持ちにはならなかっただろうか。
答えの出ない問題を考えている自分が、何だか情けなくて、横に首を振りながら苦笑する。
そして先程の、あの人の顔を思い出す。
自分の幸せを語る、あの人は、いつもより、ずっと美しかった。
店にある、どの花よりも、ずっと…………。
あの笑顔を思い出すだけで僕は胸が熱くなり、なにか満たされる気持ちになった。
僕は立ち上がり、窓を開けた。
オレンジ色のキレイな空に、どこからか金木犀の甘い匂いが漂ってきた。
あの人の大好きな花の匂い。
僕は甘い香がする風を受けながら、あの人の幸せと、あの人の美しい笑顔が続く事を願った。
あの人が幸せで、笑ってくれていたら僕は…………。
そう思い、僕は自分の恋に別れを告げた。
冷たい秋風に乗って漂う甘い香が何だか切なかった。
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