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タカシの車に乗り込み、福山の家に向かった。
タカシの車は白のクレスタだ。昔は族車として若い人に人気だった車だが、何しろ古いポンコツ車だ。
助手席には猫のクイーンが乗り、俺とトシは後のシートに座った。
「レッツラゴー!」
タカシがアクセルを踏み込む。
クレスタが勢いよく車道へと出る。
車を横浜方面へと走らせる。
福山の住む家は、金持ちしか住めないと言われる山手にある。
一軒家ではなくマンションみたいだ。
俺達は坂を登り、港の見える丘公園近くにあるマンションへとたどり着いた。
どうやらここが福山の住むマンションらしい。
ロビーには警備員が居て、不審者の侵入は難しいだろう。
これでは新聞の勧誘もできない。
「どうする、トシ?これじゃあ本当に住んでるかどうか確かめるのは無理だぜ?」
トシが車のドアを開ける。
「やりようはある。ちょっと行ってくるわ。」
トシは軽い感じでマンションへと向かった。
だが、中へは入らず玄関あたりでキョロキョロとし、すぐに戻ってきた。
ガチャ。
ドアを開けて、トシが車へと戻ってきた。
「やつの部屋は505号室、わりと上の階みたいだな」
「どうしてわかったの?」
タカシが素直に聞く。
「郵便受けだよ。最近は名前を書かない奴も多いが、神経質なタイプっぽいから多分名前書いてあると思ったんだよ」
トシがニッと笑った。
さすがトシだな。頭がよく回る。
俺達は次に、勤め先であるギャラリーとかいう古美術を扱う店に向かった。
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