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 貰ったその日の内にソフィアは部屋に戻って書物の表紙をめくった。部屋にまだ机が無い為、幾分か硬いベッドの上に腹這いになっての格好であったが、今の彼女にはそれすらどうでもよいと思えた。彼女の側で壁に背を当てるように並べられたぬいぐるみ達すらも放って、彼女は視線を一ページ目に向ける。読破しようという意気込みが書物に注ぐ視線と興奮まじりに荒くした鼻息と共に見受けられる。  書物に記された文字は絵本よりも少しばかり難しい単語が並んでいた。これが絵本であったならば幼子に優しく読み聞かせしやすい簡単な文章であっただろうが、魔術書である以上そうもいかない。読みなれた文章とは違い、若干の堅苦しさがある単語の羅列に最初はソフィアの目も回るかと思われたがすんでのところでそれを押しとどめる。  これを理解出来なければ自分は両親に近づく事も、ましてやあの書斎に積み上げられた書物も読み解く事が叶わないのだ。  その意思が彼女の心に火をつけ、再び書物へと向かわせる。同時に贈呈された辞典を傍らに、彼女の目は単語を追った。  
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