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 とりわけ若い彼女の存在は、ソフィアにとって一番親しい存在だった。清掃業務を終えた後の彼女に積極的に声をかけているぐらい、彼女は近づきやすい存在であったといえる。現に彼女が清掃業務を終えて箒を手に佇んでいる姿の前に立って、今も話しかけている。  だからこそ、読破した事の報告と新しい本が読みたいという願いを話した時、そう返されたのはソフィアにとって心外であり、また、不快感を覚えさせた。てっきり賛同してくれるものと思っていただけに、一蹴されて口を尖らせる。自分の思考は間違っていない事を突きつける為に、さらなる反論で返す。 「どうして? 読み終えてしまえばそれで終わりではないの?」 「絵本等であればそれで十分でしょう。伝わるものは確かにありますから。ですが、お嬢様が今手にしておられるのは簡単なものとはいえ、立派な魔術書なのです。  魔術書とはただ読むだけの書物ではありません。そこに並べられた言葉以外から何が見えるのかを考えなければなりません。隅々まで調べて読み解いてこそ、真に理解したと言えるのです。私は、以前先生にそう教えられました」 「センセイ? それって、“学校”っていうところの人よね?」 「はい。私にとっては恩のある御方です。おかげで少しですが魔法を扱えるようになりましたし、こうやって働く為に何が出来るのかを考えられるようになりました」 「……“考える”ってことは、色々なことに使えるのね」  間を空けて呟くように発すれば、ミウウェは口元を緩ませて一つ頷いた。 「はい。きっと、お嬢様の人生にも役立ちます」  
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