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「そういえば、もうすぐお前の誕生日だな」
不意に放たれた父の言葉。その中に含まれた“誕生日”という単語に大きな青い目が動く。
「うん、そうだよ!」
「じゃあ、誕生日プレゼントを用意しないとな。何か欲しい物はあるか?」
欲しい物。
そう尋ねられて彼女が真っ先に浮かんだのは両親が分厚い書物を数冊抱える姿。乾いた木の板を歩いてソフィアに背を向け、玄関を出て行く後姿。しかしながらソフィアの興味は両親の姿ではなくその手に抱えられた書物にあった。
兼ねてからの憧れ。でもまだそれを読むには自分は幼い。
少しでも両親に近づきたかった。早く大人になりたかった。
だから少女は望む物を口にする。自分を次のステップへと進める為に。
「本が、欲しいの」
「新しい絵本?」
「ううん、絵本じゃない本が欲しいの。パパやママがいつも持ってるみたいなのが欲しい!」
娘の希望に、両親が浮かべたのは驚きと、それから戸惑いだった。二人とも軽く眉根を寄せて顔を見せ合っている。まだ幼い彼女が所望するには早いとでも思ったのだろうか。両親の戸惑ったような表情を見てソフィアも眉根を寄せる。
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