終章

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「テラサワ」が何も知らないままハンカチを振り回しているのが、分かっているだけに、可笑しさもひとしおだった。 思わず頬が弛むのを、下を向いて、必死に誤魔化したっけ。 その甲斐があったのか、「テラサワ」は、わたしの態度には、何の疑いも抱かなかったようだ。 何の疑いも抱かないまま、わたしの作り上げた罠に落ちていった。 わたしの脳裏に再び、アリジゴクが浮かんだ。 アリジゴクに落ちた哀れな蟻と「テラサワ」の姿が重なって見えた。
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