なくしもの

そして……

「いいえ、そうは行きません。けじめですから」

「もう、本当にやめてよ」
そう言いながらも、静江は満更でもない様子だ。

本当にどうして静江が支部長に抜擢されたんだろう。

祥子は考えていた。
確かに、営業成績はいいみたいだったし、保険の知識が豊富なのも認める。
でも、それにしたって……。何人抜きなんだろう、この人事は？

祥子は静江の顔を見た。
最近、静江が妙に明るいのも癪にさわる。