なくしもの

終章

日曜日、わたしは早起きして、念入りに料理を作った。
昼過ぎに、兄が遊びに来ることになっているのだ。
兄を含めた家族みんなで、ちょっとしたパーティーみたいなことをする予定だ。

子どもたちは朝からはしゃいでいて、家中をバタバタ走り回っている。
わたしも浮かれ気味で、つい鼻歌なんかを口ずさんでしまう。

あの日、会議室で黒崎さんから、支部長昇進の打診を受けたときには本当に驚いた。
断ってしまおうかとも思ったが、結局引き受けることにして、正解だったと思う。
今は同僚たちからのやっかみもあり、多少ギクシャクしたところもあるが、いずれはうまく回っていくようになるだろう。