206人が本棚に入れています
本棚に追加
一口目は卵焼き。唯の卵焼きは絶品だからな。
焼き具合や味、全てが私と相性がいい。
腹が減れば何でも美味しく感じる。その分美味しいものも尚更美味しく感じるんじゃないかと思う。
口の中に味が広がって、思わず目を瞑ってしまう。
「今日は甘めに作ってみたんだけど……どう?」
唯がみんなに問い掛けてるみたいだ。遥菜と佑奈が答えたらしいが、今の私には周りの音があまり聞こえない。
それくらい卵焼きが美味しいんだ。体の芯から何かが抜けていく感じがする。疲労が全て、抜けていってるような……。
なるほど、甘めに、か。通りで牛乳の味が強いと思った。
「──…天?」
「え?あ、あぁ……うん、めちゃくちゃ美味しいよ」
「もう、大袈裟だよ。いつも食べてるでしょ?」
「いや、うまいもんはうまい」
もう何が言いたいのか、自分でもわからなくなってきた。
もう一口、卵焼きをつまむ。
……うん、やっぱりうまい。
「最高だよ、唯」
「そんな泣かなくても」
知らない内に私は涙を流していたようだ。唯がハンカチで涙を拭いてくれている。
困っているように見えるけど、照れ笑いをしているようにも見えた。
あ、やっぱり可愛い……?
最初のコメントを投稿しよう!