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「ったく、この馬鹿。人騒がせな奴だな」
「すんましぇん……」
場所は変わって保健室。
唯と遥菜と佑奈はソファに座っていて、私は先生と向かい合った椅子に座っている。
遥菜に罵声を浴びせられるのに慣れているつもりでも、やっぱりグサッと来るもので。
どんどん身が縮こまっている気がする。
気を失って散々な目にあったが、おかげで落ち着くことも出来た。それよりも今は申し訳なさでいっぱいだ。
多分三人でここまで運んでくれたんだろう。
「びっくりしたわよー。まさかご飯が気管に入って気絶するなんて、あなたくらいじゃない?」
「はい……」
「それより」
先生の目の色が変わった。
初めて見るものに興味津々な目だ。
「本当に男の子になっちゃったんだねぇ、綾瀬さん」
嗚呼、やっぱりそうですよね、気になりますよね。
でも嬉しいことに、まだ『綾瀬さん』だ。他の先生はもう『綾瀬くん』って呼ぶし、クラスメイトだって『天くん』だし。
じーんと、胸に喜びが溢れた。
「あっ、さん付けはやめた方がいいかな?」
椅子から落ちそうになった。
「いやっ、さん付けで結構です!と言うかさん付けがいいです!なんならちゃん付けでも!!」
「わかったわかった。今まで通り『綾瀬さん』ね」
顔を崩して笑ってる先生。
まだ若いからか、少しあどけない感じがする。多分ここが女子校じゃなければ、男子が釘付けになるんじゃないか?
ま、そんなのはいいとして。
「四人とも、午後の授業頑張ってね!あと綾瀬さん、放課後、よろしくね」
「あ」
放課後……健康診断だっけ?
今まですっかり忘れていた。
「唯ー、今日は先に帰っててくれないか?」
「うん、わかった」
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