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わからないところを一生懸命教え合っている二人をぼーっと見ていたら、視界の横からカップが出てきた。
私のお気に入りの、リアルな犬の絵がプリントされているカップ。
視線を斜め上に持っていくと、微笑んでいる唯の顔があった。
「はい。お待たせ」
「おぉ、サンキュー。時間かかったな?」
「お茶、遥菜達に出したのが最後だったみたいでね。ココアにしたから」
お湯を沸かしてたからか。なるほど。それなら時間かかるな。
確かにカップの中にはココアが入ってる。牛乳を入れたんだろう、白いラインみたいなのがある。
「あ、そうそう。今日の晩御飯も私が作るから」
「食堂に行かないの?」
「うん。だって、疲れたでしょ?」
これ以上疲れがたまったら倒れちゃうよ、と付け足し、キッチンへ行ってしまった。
まあみんな揃って食べる給食じゃああるまいし、利用は自由だからな。
それに、唯の言う通りだ。もう倒れそう。
唯に世話になってもらってばかりだ。いやいつもそうだけど、今日は特に。
いつか必ずこの恩を返そうとか考えながら、ココアを啜った。
「──で、お前らも食堂に行かないのか?」
「そうだよ。天が帰ってくる前にあたしらで決めたことだからな」
「そうなのか!?唯!」
「うん。大勢の方が楽しいし、二人に教えてもらいたいとこもたくさんあるし」
「ご、ごめんね。私までご馳走になるなんて……」
「あー……まっ、いいか」
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