夏憩~なつやすみ~

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夏。 それは暑い。 日本は湿度が高い。蒸し暑い。 けれども人は動く。暑い外でも動く。 男は自転車をこぐ。 坂道をこぐ。 「はぁ」と息をこらしながらのぼっていく。 道路はコンクリートで補正されていたが、坂は山を削ったのか急だ。 道路の両端には等間隔で木が埋められていて、深い緑の葉が夏の風に揺れている。 そんななかを彼は汗をだらだら流しながらこいでいる。 彼の汗は地面に落ち、地面は潤いを保つが、すぐに蒸発し、触れば火傷してしまいそうな地面にもどる。 「え、えらい…」 やっとのことで坂を上りきった彼は疲れたのか、一度自転車を降り、鞄の中に入っていたペットボトルを取り出し、中の水を飲んだ。 「うぇ…」 中の水がこの暑さでぬるくなってしまったのだろう。 しかし彼はかまわず水を飲み続ける。よほど喉が渇いていたのだろう。残りの水を一気に飲み干す。 「はー。生き返るー」 いい年の大人が酒を飲んだようだ。 男はペットボトルを鞄にいれ、もう一度こぎ始める。
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