違う景色

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いつもの時間、いつもの景色…。だけどその時が最後だとは思っていなかった。 君(仮にTとしておく)が運転する車の中、僕は当たり前のように隣に座っていた。僕は免許を持っていない。でも君は持っている。多少の情けなさを感じながらふと横顔を見ていた。映画のワンシーンのような、出来過ぎとも言える夕日がTを照らしていた。 「…どうしたの?」 僕の視線に気付いたらしい。 「いや、別に…。あ、でも…」 そのあとの言葉が続かず答えにならない返事をしてしまう。自分でも「でも」のあとに何を言いたかったのかわからない。ただ、見とれていた。 「これからどこかに行く?」 「いや、いいよ。今からバイトあるんでしょ?時間無いからいいよ」 1時間くらい前、Tはこれからバイトがあると言っていた。気を遣ってくれているのか、お互いそんな時間は無い事をわかっているのに、そんなTの言葉に少し戸惑ってしまった。 「このあたりで降ろしてくれればいいよ」 「本当に?家までまだあるよ?」 そう言ってくれていても止める気が無いのは鈍い僕にもわかった。 少し歩きたかった。
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