違う景色

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Tと二人で会う事になったのはその前日の事だった。珍しい事じゃない。他愛もないいつものメール、その中で「明日会って少し話がしたい」と言われた。 二人で会うのも何度目になるだろう。お互い時間があればよくどこかに出かけていた。その時もいつものように、ただ話をして、二人で笑って、二人で悩んで、そんな事の繰り返しで終わるんだろうと思っていた。 「あのさ、あの人と別れたんだよね…」 ちゃんと聞いていなければ聞き流してしまうくらい突然、そしてあまりにもあっさりとTは切り出した。 「仕方ないんだよね。どうしてこうなったかは自分でもわかるの」 そう言ってTは笑いかけてくれた。淋しそうな笑顔だった。 僕はTと付き合ってはいないし、恋人がいるのも知っていた。一度だけだが会った事もある。よく僕の話をしているらしく恋人も嫉妬している様子ではなかった。 ただの友達、それ以上でも以下でもなく、これからもそうあるはずだと思っていた。 別れた、という話をされ二人共少しの間何も言葉が無いまま車は走り続けた。
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