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Tは別れたいきさつや恋人との思い出を少しずつ話し始めた。
僕は何も言わなかった。何も言えなかった。もしかしたらTの話をわざと聞かないようにしていたのかもしれない。とにかく何一つ言葉が出なかった。
「…聞いてる?」
「え、う、うん…」
再び二人の間に沈黙が戻った。こんな時、気の利いた一言でもあればTはまた笑ってくれたのかもしれない。Tもそれを望んでいたのかもしれなかった。
しばらくそんな事を考えながら、僕はやっと口を開いた。
「それで、これからどうするの?」
「え!?どうするって何が?」
自分でも何を言っているのかわからなかった。
「…どうしたいのかはまだわかんないな」
「そうだよね…」
やっぱり自分は馬鹿だ。何を聞いているんだろうか。Tは間違いなくそんな事を聞かれたくて別れた話をしてきたんじゃない。でも、やっと捻り出した言葉はその程度のモノだった。
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