違う景色

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僕は歩いていた。 住んでいるアパートまでまだ少しある。あたりは少しずつ暗くなり始めていた。 恋人と別れた、なんてどこにでもある話だ。そしてそれがTの話であっても、それは変わらないはず。僕だって恋人と別れた事もあるし、他の友達からだってそんな相談をされた事もある。ありふれた話なんだ。 だけど何かが違う。上手く表現出来ないけど、いつものそれとは違う、それだけはわかった。 僕は歩きながら、Tの話と淋しそうな笑顔、そして夕日に照らされた横顔を思い出していた。Tとの思い出や…、とにかく色々な事が頭の中でいっぱいになっていた。 (ただの友達だよな) そう自分に言い聞かせながら歩き続けた。 ふと横を見ると、街灯のあかりに虫が集まっていた。名前も知らない小さな虫や蛾が数匹飛んでいる。それを見ていると不思議な気持ちになった。 気がつくとアパートの前にいた。
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