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「なんだって!!」
とある木造造りの学校。色黒く年期の入った木板の廊下で青年は怒鳴っていた。
彼の力強い発声は古惚けて張力の弱った木板だけでなく、目の前に立つ初老の教諭さえも小震いさせる。
「うそだろ……カイン先輩が戦死したなんて……!!」
「レイ君。信頼する先輩をなくした気持ちはよく分かるが、とりあえず落ち着きなさい」
項を垂れ、表情を隠した青年に初老の教諭は彼を優しく諭しながら彼の頭に皺枯れた手を置く。
「うるさい!!」
青年は教諭の手を乱暴に振り払うと、踵を返して廊下を走り抜けていった。
「……やれやれ。あとでティナさんにも話しておこうか……」
青年が初老の教師の視界から消え、彼の足音がまだ廊下に反響している最中に、教諭は白い顎鬚(あごひげ)にそっと触れながら呟いた。
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