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秋岳市は全国でも有数の大都市である。
だが、中心部から離れていくと、のどかな田舎もある。
ここ樋川は辺り一面水田が広がっている静かな地域だ。
* * *
水田の間の道を2人の少年が歩いている。
「よう、語! 今日は体育があるぞ!」
「ん? ああ、陸か。 おはよう」
どうやらこの2人の少年は語と陸という名のようだ。
「どうした? 反応が悪いな」
「いや……、ちょっと考え事をしててさ」
「エロい妄想か? 語もエロいやつだなあ……」
陸と呼ばれた少年がニヤニヤしながら言った。
「違ぇよ、馬鹿。 そろそろバイトでも始めようかと思ってさ……」
「どうした? 彼女でもできたか?」
またしてもニヤニヤしながら言う。
「違ぇよ。 将来のために貯金しようかと思っただけだよ。 この先何があるか分からないだろ?」
語と呼ばれた少年は何か考えがあるような表情で言った。
それを知ってか知らずか、陸と呼ばれた少年は一瞬ニヤッとして、
「まあ……そうだな、バイトするなら俺も誘えよ!」
と、何か企んでいるような表情をした。
それに対して語と呼ばれた少年は少し思案顔になると、
「仕方ないな……、分かったよ……」
そう諦めた様子で言った。
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