始まり

2/10
前へ
/202ページ
次へ
 秋岳市は全国でも有数の大都市である。  だが、中心部から離れていくと、のどかな田舎もある。  ここ樋川は辺り一面水田が広がっている静かな地域だ。      * * *  水田の間の道を2人の少年が歩いている。 「よう、語! 今日は体育があるぞ!」 「ん? ああ、陸か。 おはよう」  どうやらこの2人の少年は語と陸という名のようだ。 「どうした? 反応が悪いな」 「いや……、ちょっと考え事をしててさ」 「エロい妄想か? 語もエロいやつだなあ……」  陸と呼ばれた少年がニヤニヤしながら言った。 「違ぇよ、馬鹿。 そろそろバイトでも始めようかと思ってさ……」 「どうした? 彼女でもできたか?」  またしてもニヤニヤしながら言う。 「違ぇよ。 将来のために貯金しようかと思っただけだよ。 この先何があるか分からないだろ?」  語と呼ばれた少年は何か考えがあるような表情で言った。  それを知ってか知らずか、陸と呼ばれた少年は一瞬ニヤッとして、 「まあ……そうだな、バイトするなら俺も誘えよ!」  と、何か企んでいるような表情をした。  それに対して語と呼ばれた少年は少し思案顔になると、 「仕方ないな……、分かったよ……」  そう諦めた様子で言った。
/202ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加