上司と部下

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元遊び人の斗真と結婚して、もうすぐ一年になる。 多分、斗真は覚えてないだろうけど。 「おい、魚の鮮度が落ちてる。料理長を呼べ!」 今日も朝から斗真の厳しい声が飛んでいた。 父親から任されたホテルをもっと大きくしようと、この一年斗真は本当に頑張ってきたのだ。 今では斗真を慕う部下ばかり。 私は斗真の秘書兼客室係としてサポートをしている。 「…今日は常連のお客様が来るな…。香奈。」 予約状況をパソコンでチェックしながら、斗真が私の名を呼んだ。 「はい。」 「こちらのお客様にはお前が付け。失礼があると困るからな。」 「…はい!」 信頼してくれている。 だから大切な常連客に付けてくれた。 …だけど、最近の私はそれが少し不満でもあった。 客室係の仕事ばかりを回され、秘書として動く事ができない。 …まあもう一人男の秘書がいるから、私が居なくても大丈夫なんだろうけど…。 でもやっぱり…寂しい。 最初の頃は秘書として斗真の側にずっと居られた。 だけど今は、朝のミーティングの時しか顔を合わせられない。
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