面倒な日々の始まり

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「お兄ちゃん、さっき部屋から凄い音が聞こえて来たけど、あれ何?」 「気にすんな。寝惚けて頭打っただけ」 琢磨は言い、コップに注いだ牛乳を一気に呷った。 飲み干す時の声も無論忘れない。 バターが塗られて光るトーストを、琢磨は一気に齧った。 「琢磨は夏の間、何か予定はあるのか?」 「無い。部活もやってないし、やりたいこともまだ無い」 そしてもう一口トーストを齧った。 「なぁ琢磨、お前田舎に一人で行かないか?明日から」 「田舎?ああ、祐一伯父さん家?」 「そう、もう何年も会って無いだろ、高校合格してもう夏休みなんだ。顔出して来なよ」 悪くないかも、琢磨はふと考えてみた。 祐一叔父さんとは、単身ヨーロッパに単身赴任で居る琢磨の母親の弟で、結構気さくな人だ。 受験が忙しいから中三の時は会わなかったが、それまではあっちから出向いて来てくれていた。 もう高校生だ、一人で顔出しするのもいいかもしれない。 そして昔から話だけには聞いていた“従妹”の事も知れるかもしれない。 「わかった、行くよ。交通費出しといて」 小さなかけらになっていたトーストを、琢磨は口に放り込んだ。 ~・~・~・~・~・~・~・ 夕暮れ時、デカい旅行鞄に琢磨は旅行の用意を詰めていた。 服、洗面用具、下着、携帯電話、充電器、暇潰し用のゲーム機、iPodなど、色々な物を手際よく詰めていき、大方の用意は終わった。 「ふー、終わった。後は明日を待てば…」 琢磨はふと、机上にあるフラッシュライト付きガスガン、M9モデルのガスガンを取った。 スタイリッシュなデザインで定評のその銃の模造品を、回しながら物色した。 そして何を思ったか、おもむろにガスガンとBB弾、ガスガン用のガスをを旅行鞄に詰めた。 「ま、なんかのお守りくらいにはなるだろ」
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