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ちゅどーん……!
遠くに頭の悪い爆発音を耳にして九宮栄嗣──エイジは顔をあげた
「どうした?」
そんなエイジに、目の前の相棒が問いかけてきたので首を縦に振る
すると相棒である少女も軽く頷いて、改めて得物を握りしめた
二人がいるのは階段下のスペースだ。廊下中の照明がついているため、物陰になって隠れるにはうってつけ
ある事情からそこに潜んでいるのだが、徐々に爆破音が近づいてくるのを聞くと思惑どおりに事は進んでいるらしい
「愛流は大丈夫ッスかね……」
ここにいないもう一人の仲間、天見愛流がふと心配になった
彼女は今、単身爆発音の元凶と逃走劇を繰り広げているはずだ
「釣りはあいつの得意分野だろ。それにこっちに近づいてるってことは無事な証拠だ」
エイジの呟きを拾って少女、神崎リリィがその大きな瞳を向けてくる
言葉自体はぶっきらぼうだが、それはリリィが自分に言い聞かせている言葉でもある。心中は穏やかじゃないはずだ
「なんだよ」
じっと見つめているエイジを不審に思ったのか、リリィがむすっと眉をひそめる
「なんでもないッス」
そう答えて、今の自分の状態でよかったとしみじみ思う
本当は微笑ましいリリィに生温かい笑顔を送っていたのだが、それが普通の状態で見られていたら確実に手が伸びてきていた
ちゅどーん!
爆発音がさらに近付いてきた
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