愉快なきみ達

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「君を待っていたよ。九宮栄嗣くん」 その放課後、夕陽の中で黒ずくめの男がそう言った。困惑するばかりのエイジを置いてさらに言葉を重ねる 「約束の時が来た。願いを叶える星の巡りが」 「ち、ちょっと。なんの話ッスか?」 突然現れて変なことを言い出した男を制止して訊ねるが、男は答えない。代わりにこう名乗った 「私は魔法使いだ」 そんなことは聞いていない。しかし男はこちらを気に掛ける素振りもなく 「星の欠片を集めたまえ。器を満たせたなら、君の願いを叶えよう」 そう言って渡されたガラスの小瓶。受け取ってから、エイジは男の妙な雰囲気に流されていることに気付いた だがすでに遅かった。男が腕を上げ、途端にエイジの足元に異常が起こる そこに現れたのは、光り輝く円と模様の図形……魔法陣 「星を集める力を与えよう。君は他の者と同様、勝ち取らなければならない。己が願いを」 逃げることはおろか、声を出す暇もなくエイジの視界は魔法陣から立ち昇った光に呑まれる 最後に見えたのは、男の黒い帽子の下から覗く、深遠な色をした印象的な瞳だった こうして運命に巻き込まれたエイジを加えて、魔法少女たちの戦記(ゲーム)は幕を開けたのだ ──── わずか数日前の出来事なのに、ずいぶん昔のことに思えてエイジは苦笑した 朝の通学路でのことである 「おーい、エイジ! なぁに朝からニヤニヤしてんだよっ?」 そんな声と共に、誰かの手が肩を叩いた。それが誰かは、見なくても分かるくらい親しい人物だ
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