愉快なきみ達

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その時、周囲でざわめきが起こった 何事かと生徒たちの視線を追って振り返ると、そこには小さな一人の少女 真っ赤な髪が燦然と輝き、人形のように整った顔立ちと、浮かぶ青い瞳は多くの目を惹きつけて離さない 容姿から分かるように、彼女は生粋の日本人ではない。ヨーロッパかどこかのハーフだと聞いた そんな少女が、まっすぐこっちに歩いてきた 「……」 エイジの前で立ち止まって、なにやらむすっとして見つめてくる 「えっと、おはよう。リリィ?」 笑顔で挨拶したのだが、彼女──神崎リリィの眼差しはいまだ厳しい 嫌な予感がして、退路を探して周りを見回すと生徒たちが輪を作って野次馬と化していた 「ちょっと、来い」 リリィがそう言って、エイジのズボンを引っ張ってズカズカと歩き出した その進路で、まるでモーセの前の海の如く野次馬が道を開ける いつの間に移動したのか、そんな中に合掌する四朗の姿を見つけて肩を落とした エイジは諦めにも似た気持ちで、これから起こる不可避のイベントに臨んだのだった ──── 「なんで逃がしたんだよ!」 引っ張られるままに校舎裏に移動して、開口一番にそう怒鳴られた 「いや、だって」 「だってじゃない! お前は甘すぎるんだ!」 やはり反論は受け付けてくれないらしい。困って頬を掻くエイジの前に仁王立ちして、リリィが説教を始める 人形のような見た目に反してリリィは強い言葉を使い、性格も短気で気が強すぎる なので、身長の差で見上げられているのにも関わらず、エイジはそんなリリィに迫力を感じて小さくなってしまう
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