愉快なきみ達

6/18
前へ
/36ページ
次へ
「おーい、お二人さん。揃って仲良く遅刻かぁ? ナニやってたんだよ」 教室に入ったエイジとリリィを最初に迎えたのは、四朗のそんな一言だった 次いでクラスメイト達の生温かな視線が集中する 「なにもやってない!」 「昨日の話してただけッスよ?」 リリィは何故かいきり立ち、エイジはそんな相棒の反応に首を傾げつつ答えて席に着いた 「昨日……ああ、派手に暴れたみたいだな。西棟3階から廊下を渡って北棟の1階まで続く破壊痕と第2講堂のクレーター。学園中その話題で持ちきりだぞ」 前の席である四朗が、声を潜めて教えてくれた。一応は周りを気にしているようだ 「アタシも結構ぶっ壊したしな。けどほとんどアイツの仕業だぞ」 エイジの隣の席に座ったリリィはあっけからんとしたものだ。話に加わるためにエイジのすぐ隣に椅子を寄せる 「でも講堂のクレーターはリリィッスよね。被害で言えば一番大きいッス」 「う、うっさいな」 リリィの小さな拳が飛んできた つかまえて軽く握るとおとなしくなったが、代わりに頬を膨らませる。素で可愛らしい仕草だった それを見ていたクラスメイト(主に男子)が唐突にバタバタと倒れだした 「なんだ?!」 女子も女子で、キャーキャー叫びながらリリィに群がり、撫でたり抱きしめたりとやりたい放題だ その波に押されてエイジと四朗はその場を離脱する 去り際にリリィが助けを求めるような目を向けてきたが、当然エイジにはどうしようもない 片手を上げて謝っておき、話は後でと目配せしておく 今はホームルーム だというのに我らが担任、杉先生はいまだ現れない 「平和ッスねぇ」 今日もこのクラスは賑やかだった
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加