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亀山は飲んでいたコーヒーを置いて、慌てて右京を追いかけた。
車の前まできた所で右京は亀山に話しかけた。
右京「どこへ行くか決めましたか?」
車に乗ろうとしていた亀山は、その問い掛けに反応をして手を止めた。
亀山「え?ああ、とりあえずその子の通っていた高校に行こうかと。」
亀山の言葉を聞いた右京の表情は、どこか険しく見えた。
右京「そうですか。」
そう一言言うと車に乗った。
亀山は右京のその一言と表情が気になり、素早く車に乗り込んだ。
亀山「どうしたんスか?」
亀山はアクセルを踏んで車を発進させた。
そして、しばらく間が空いた。
右京「何がです?」
亀山「いや、何か右京さんの表情がいつもより険しいな~って思ったんで。」
右京「何か、この行方不明事件はとても嫌な予感がします。今はまだ確証はありませんが、僕に言わせれば疑問点だらけです。」
亀山「疑問・・ですか?」
右京「ええ。」
亀山「でも、まだ何の情報も無いんスよ?」
右京「いえ、ありました。」
亀山「でも、角田課長が情報は全く無いって言ってたじゃないッスか。」
右京は遠くを見据えた。
右京「その情報が一つも無いという事が、おかしいと思いませんか?」
亀山「どういう事ッスか?」
右京「先程本庁を出る前に、角田課長に捜索願いを出した方の住所、名前などを聞いてきました。」
亀山「それなら、その人の所に行った方がいいんじゃないッスか?・・家族の人ですよね、捜索願い出した人。」
右京「どうやら違うようです。警視庁まできて、捜索願いを提出する。ここまでは普通です。」
亀山「確かに普通ですね。でも違うってどういう事ッスか?」
右京「提出された捜索願いには提出者の住所、電話番号などは書いてなかったそうです。名前だけは書いてありましたが・・・。」
亀山「何て言う名前ですか?」
右京「岩田由美子と書いてありました。これ以外何の情報もありません。」
亀山「じゃあ、その岩田由美子って人を探せばいいんじゃないですか?」
右京は一息置いた。
右京「住所も電話番号も書いていないという事は名前も偽名だと考えていいでしょう。」
亀山「なるほど・・あ、ここじゃないッスか?その行方不明の子が通っていた高校って。」
亀山は比較的静かにたたずむ高校を指差した。
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