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「やりました!それでは明日は一緒に学校に行きますね!」
素敵な笑顔に似合う短めの髪を揺らしながら、俺の右隣で軽く飛び跳ねたサトコさん。
アスファルトと革靴が衝突する小気味のいい音が閑静な住宅街に響き渡る、対して俺の足音は重く鈍かった。
「いや、あの………。」
俺の言い回しの問題だろうか?どうやらサトコさんとやらは俺の返答をYESと取ったらしい。
まぁ…可哀想だが今度はきちんと断ろう、そう考えた俺は踵を返し、またこの名前がサトコだという情報しか知らない女の子に向き直った。
「あの、ごめん…俺はあんたと付き合う事は出来ないんだ。」
「そうなの、じゃあ明日は家に迎えに行きますから。」
「………。」
これが噂に聞くデシャヴュか、何か会話がループしてるような気がしてならない……どうにも誤解が解けない。
「あのサトコさん、落ち着いて聞いてほしいんだけど僕は君を振ったんだよ?そう、振ったんだ!」
これほどまでに率直な振り方もあるまい、語弊も誤解も生まれようがないような完全決裂宣言である。
「では、明日は朝何時に迎えに行けば良いのですかね?」
「なん……だと………。」
何だろう、このDQ5でパパスに無理矢理アルカパに連れてかれた時の主人公の気分だ。
平凡な日常にこんなに抗いようのない理不尽が横行しているとは日本も終わりだ、これはもう誤解とか語弊の次元じゃない………電波か?
完全に打ちひしがれてしまった俺は《はい》も《いいえ》もそれ以上言わずに、住宅街というダンジョンでただ我が家を目指した。
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