変わる世界

22/23
前へ
/92ページ
次へ
「勝手に来た、ねぇ。それよか、ずいぶん仲がいいんだな」 蓮二が、春の服をしっかり掴んで離さない少女を見て言った。 「それは僕も思った。まぁ、仲が良いのは兄妹としてなら良い事だと思うが……」 駿はどうやら、まだ二人が兄妹だとは思っていないらしい。 先ほどから傍観を決め込んでいた他のクラスメイトたちも、やがて二人を見る目が怪訝になっていく。 「……ウサちゃん、実はロリだったのか。意外だったぜ」 蓮二の発言に、辺り(主に女子)が沸いた。 結構かっこいいのに誰とも付き合わなかったのはそのためか、とか、実は狙ってたのにショック、とか、彼となら美味い酒が呑めそうだ、とか、散々勝手なことを言われる春。 「ま、待て! みんななんか誤解してるぞ! 俺はロリ属性なんかじゃあ……」 一旦少女を見る。 潤んだ瞳がこちらを見上げていた。 「……断じてない!」 「今の間はなんだ!」 ぎゃあぎゃあ騒がしくなる教室。 そりゃあついこないだ転入してきた、とりあえずなんでもこなせてなかなか顔もいいクラスメイトが、実はロリコンでしたなんて事になれば、これ以上の話題性はない。 「へー、これが宇佐美くんの妹かー。可愛いねー」 「うわぁ、肌も真っ白。わたしもこんな可愛い妹欲しいなー」 春が囃し立てる男子たちに向かっていったため、取り残された少女に、女子たちが群がる。 「ねぇ、お名前はなんていうの?」 そして一人の女子が、前屈みになって目線の高さを合わせつつ、びっくりさせないよう優しく問い掛ける。 「…………?」 いつものことながら、少女は喋らない。 というより、喋れない。 問い掛けた女生徒の方も首をかしげ、蓮二の首をがっちりホールドしている春の背に、疑問を投げ掛けた。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

102人が本棚に入れています
本棚に追加