102人が本棚に入れています
本棚に追加
「勝手に来た、ねぇ。それよか、ずいぶん仲がいいんだな」
蓮二が、春の服をしっかり掴んで離さない少女を見て言った。
「それは僕も思った。まぁ、仲が良いのは兄妹としてなら良い事だと思うが……」
駿はどうやら、まだ二人が兄妹だとは思っていないらしい。
先ほどから傍観を決め込んでいた他のクラスメイトたちも、やがて二人を見る目が怪訝になっていく。
「……ウサちゃん、実はロリだったのか。意外だったぜ」
蓮二の発言に、辺り(主に女子)が沸いた。
結構かっこいいのに誰とも付き合わなかったのはそのためか、とか、実は狙ってたのにショック、とか、彼となら美味い酒が呑めそうだ、とか、散々勝手なことを言われる春。
「ま、待て! みんななんか誤解してるぞ! 俺はロリ属性なんかじゃあ……」
一旦少女を見る。
潤んだ瞳がこちらを見上げていた。
「……断じてない!」
「今の間はなんだ!」
ぎゃあぎゃあ騒がしくなる教室。
そりゃあついこないだ転入してきた、とりあえずなんでもこなせてなかなか顔もいいクラスメイトが、実はロリコンでしたなんて事になれば、これ以上の話題性はない。
「へー、これが宇佐美くんの妹かー。可愛いねー」
「うわぁ、肌も真っ白。わたしもこんな可愛い妹欲しいなー」
春が囃し立てる男子たちに向かっていったため、取り残された少女に、女子たちが群がる。
「ねぇ、お名前はなんていうの?」
そして一人の女子が、前屈みになって目線の高さを合わせつつ、びっくりさせないよう優しく問い掛ける。
「…………?」
いつものことながら、少女は喋らない。
というより、喋れない。
問い掛けた女生徒の方も首をかしげ、蓮二の首をがっちりホールドしている春の背に、疑問を投げ掛けた。
最初のコメントを投稿しよう!