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「我が裁きを受けよ!」
「あだだだだギブギブ! もげる! 首から上がもげちゃう!」
「もげろ!」
「悪魔かお前!」
「ねぇ、宇佐美くん。取り込み中悪いんだけど……」
「あぁ!?」
血圧の上がっていた春は、知らず知らず柄の悪い顔で振り向く。
「あ、その、この子、なんて名前なの? 聞いても答えてくれなくて」
「うっ……!」
どさり、と春は蓮二を手から滑り落とした。
げほげほうぇっほとむせ込む蓮二を余所に、春は何か言おうとして声が途切れる。
「どうしたの?」
「ああいや、こいつ人見知りでさ、知らないヤツとは全然会話できないんだ、ホント」
「うん? それで、名前は?」
どうやらあくまで名前が気になるようだ。
話をそらそうにも、春には違う話題に軌道を持っていくセンスがない。
その微妙な間が、女生徒を不審にさせていく。
「ま、まぁそんな気にすることないだろ? 昼休みもあんま時間ないし、俺、ちょっと外で飯食ってくるから!」
結局、春は逃げた。
まさか名前を聞かれると思っていなかったので、まったく頭に入れてなかったのだ。
「え、ちょっと宇佐美くん?」
弁当と少女を両腕に抱えて走り去った春を、この女生徒含めたクラスの皆は、最後まで怪しんでいた。
「寒いのに、わざわざ外にいかなくても……」
「ウサちゃん……結構容赦ないのね……」
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