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炎の鞭を左手に握った緋色の髪の彼女は、捕縛した男たちが動けないのを確認し、怯えていた女性を優しく促す。
「今の内に早く逃げなさい、大通りにあたしの仲間がいるわ」
「あ、貴女……もしかして……」
彼女の存在に、恐怖心の中にも安堵の表情を見せた女性が頷くと、急いでその場から逃げて行く。
「待ちやがれっ!!」
すかさず男たちが、逃げる女性を捕らえようと暴れ怒鳴るが、炎の鞭に強く締め上げられ動けない。
視界から女性が消え、男たちは忌ま忌ましげに、緋色の髪の彼女へ怒りをぶつける。
「てめぇ、よくも邪魔をしやがったな!!ぶっ殺してやるっ!!」
「そんな格好でそうゆう台詞を言っても滑稽なだけね」
だが、彼女は怯む事なく冷笑を浮かべ言い捨てた。
そんな彼女の態度に、男たちは尚さら怒りを爆発させ、ヒステリックに怒鳴り散らす。
「なんなんだ、てめぇは!!同じ能力者のクセにっ!!」
「能力者が俺たちを邪魔しやがって、なんのつもりだよ!!」
紅月の能力と言う、人知を逸脱した力を手に入れその力に奢れる彼らを、紅い瞳で鋭く睨み、彼女は告げた。
「『朔夜』支部所属・炎使い河内 逢莉(カワチ アイリ)。あんた達とは敵対する能力者よ」
「さ、『朔夜』だとっ!?」
炎使い・逢莉の告げた『朔夜』と言う名前に、男たちの眼の色が変わる。
そして、異形の爪をした男が捕縛していた鞭を切り裂き、一瞬の隙をついて逢莉へ襲い掛かった。
「てめぇが『朔夜』の人間ならば、尚の事殺してやるよぉっ!!」
10本の鋭く伸びた爪で切りかかった男の攻撃を、逢莉は反射的にかわし、後ろへ飛びのく。
だが、その攻撃により炎の鞭の効果が消え、もう一人の男も解放されてしまう。
「ぎゃはははっ!!何が『朔夜』だっ!俺たちの邪魔をするんじゃねぇっ!」
逢莉の背後に迫り、刃に変化させた腕を振り上げた男が嘲笑い、前方からはもう一人の男が挟み撃ちで攻撃をしかけた。
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