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だが、嘲笑うように口角を歪めた男たちは口々にまくし立てる。
「紅月に選ばれなかった奴らは全員クズだっ!!生きる価値もねぇ!!」
「だから俺たちが、紅月に代わって奴らを排除してるんじゃねぇか!!奴らなんて、この世界に必要ねぇからなぁ!!」
下卑た笑みを浮かべ高笑いする男たち。
強大な力を持ち、強者になる事で人間の心は醜く歪む。
「……人間が人間を傷つけて、殺しておいて、何が排除よ!!」
非道な事を言う男たちに、激しい怒りをあらわにした逢莉が、彼らを捕縛する炎熱鞭に意識を集中させた瞬間。
「うぎゃあぁぁっ!!」
「うわぁっ!?熱い、熱いぃ!!」
下卑た笑みを浮かべていた男たちの全身が、紅蓮の炎に巻かれて行く。
絶叫し、燃えさかる炎の熱に悶える男たちを冷たく見下ろした逢莉が詠唱した。
「散れ渡れ……紅蓮刹那っ!!」
瞬間、男たちをまとっていた炎が花びらのように舞い散り、次々と爆発していく。
「しばらく紅蓮の炎に巻かれていなさい。そうすれば、あんた達の崇拝する紅月と同じ姿になれるわよ」
紅い瞳を更に色濃くした逢莉が、炎の中で悶える男に冷たく告げた。
「あらら、派手にやっちゃったわねぇ」
「由さん」
不意に聞こえた緊迫感のない声に逢莉が視線を向けると、そこには長い金髪を一つに束ねた長身の男性がいた。
由(ユイ)と呼ばれた女顔の彼が、逢莉の隣にやって来る。
「心配ないわ。ただの幻炎よ、直に消えるわ」
「くすくす、解ってるわよ」
静かな口調で言った逢莉に、透けるようなアイスブルーの瞳を細めた彼が和やかに微笑み返す。
「逢莉ちゃんが相手を殺す技、使うわけないしね」
そう言い、由は足元で気絶する男たちに視線を向けた。
一寸前まで爆炎に巻かれて悶えていた彼らだが、今は何事もなかったように無傷で気を失っているだけだ。
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