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赤い、紅い血が白い肌を染めて行く。
『たす……けて……』
紅い血に濡れた桃色の花が、小さな身体を突き破り咲き乱れる。
『たす……けて……姉ちゃ……』
伸ばされた手が、愛しい者たちが、次々と肉片に変わって行く。
「いゃあああぁぁーーーーっ!!」
「逢莉ちゃんっ、しっかりしなさい!!」
決して夢ではない悪夢から逢莉を呼び覚ましたのは、彼の声だった。
悪夢か現実か解らず、未だ朦朧とする意識の中、眼を見開いた逢莉の視界に入ったのは、気遣わしげに覗き込む由の姿。
「……っ、ゆ、いさ……ん?!」
「大丈夫よ、あたしは此処にいるわ」
自分の存在を確かめるような、か細い声で呼んだ彼女に、由は優しく囁き、震える逢莉の細い指を握る。
握りしめられた指先に伝わる、大きく骨太な彼の指の温もりと存在感を感じ、逢莉は安堵の息を漏らす。
「……良かった……」
彼の存在すらも虚ろなんじゃないかと不安に怯えた逢莉が、無意識に由の手を握り返す。
「大丈夫?まだ気分が悪いなら横になっていて良いのよ?」
そんな彼女を愛しげに見遣った由が、そう優しく言い添え、逢莉も小さく微笑みを返す。
だが、彼の存在感に心を落ち着けた逢莉は、次の瞬間、忘れていた現実を思い出し表情を変えた。
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