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術後のカンファレンスで、3日間の入院と経過観察を通院で行う主旨の説明をしていた時、落ちた書類を取ろうとして、私はメガネを落としてしまった。
長年使っていたそのメガネはフレームがかなり太く、時代を感じさせる物だったため、落とした衝撃でレンズにヒビが入ってしまった。
「あぁ…最悪…」
私はいつもの癖で独り言を呟いたのだが、彼はそんな私をまじまじと見つめていた。
メガネは私の鎧みたいな物で、それがない素顔はまるで裸体を晒すかのような恥ずかしさがあった。それを見られて、私は顔を下に向けたのだ。
すると彼がぽつりと呟いた。
「望月先生、本当は綺麗なんだ…」
「え?!」
私は我が耳を疑った。
ドキドキしてると幻聴まで聞こえてくるのかと、我ながら呆れたのだけれど、彼はもう一度言ってくれたのだ。
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