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 桜の満開も過ぎた頃、私は妻と二人で寺に向かっていた。  途中の道で菜の花畑を見つけ、畑仕事をしている老夫婦に、その花を切ってもらった。 「おひたしの作り方まで教えてくれたわ」  黄色の花束を抱え、妻は楽しそうに笑う。  私はお菓子を手に、妻は花を手にして階段を上る。姿さえ見ることのできなかった私たちの子供に捧げるものだ。  小さな地蔵の群を通り抜けるとき、不意に吹きつけた強い風が、妻の足元をよろけさせる。  私は彼女の肩を支え、彼女も私を離さぬようにその手を握る。  春の風が吹くその道を、私たちは二人で歩き始めた。 了
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