3人が本棚に入れています
本棚に追加
創暦10年夏。
世間は創暦十周年を祝い、世界は活気が満ちている。その中でただ一人顔をしかめている青年がいた。年は17。年齢的にはまだ少年だが、身体の風貌がどう見ても青年のそれにしか見えない。
しっかりした顔付き。引き締まっているが何処か柔らそうな筋肉。トドメに女性が羨みそうな灰色の髪の毛。ちなみに後ろ髪の長さは、腰に届くか届かないかで、首筋の少し上辺り一本にして纏めている。
そんな青年はため息をしながら今の現状を考える。
朝、過去の夢を見て魘されながら起きたのは分かる。しかし、それから分からない。なんでここに居るのかも、なんでここで寝ているのかも分からない。
(確か、家のベッドで寝たはずだ……クソッ、いったい何がどうなっていやがるんだ……!)
混乱したままでは分かる状況が分からなくなってしまう。そう思った青年はため息をつきながらも、自分を落ち着けるように自分の心臓に手を当て、目を瞑り、精神を集中する。
(そういえば、師匠が〔落ち着きたい時にはこうするといいよ〕とかなんとか言ってたな……。でも、確かに少しは落ち着いたらかもしれん)
徐々に頭の中もクリアになっていくのを感じながら目を開ける。先程の混乱した頭では分からなかったが、今なら分かる。
――ここは牢屋だ。
真っ暗な部屋、先程まで寝ていた薄汚れているベッド、脱走させないように作られている鉄の棒。寧ろこれを見て牢屋ではないとすればここはいったいどこなんだ? と聞きたくなってしまう程、もう雰囲気からなにからなにまで牢屋だ。
最初のコメントを投稿しよう!