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「本当によかったの?」
その日の昼休み。
一緒に弁当を食べないかとしつこく勧誘する女生徒達を払いのけた夏希と聖汰が、今まで居た職員室から離れていた。
「ああ」
正確ないきさつは、こう。
卓球部を退部すると記した退部届を職員室にいる顧問に渡しに行きたかった夏希が、聖汰を誘って職員室へ向かった。
夏希は早々に届を顧問に渡して、現在は2人で階段を軽快に登っている。
いつにもなく清々しそうな顔をしていた夏希を見て、聖汰が口を開く。
「わざわざやめることもなかったんじゃない?美綱ちゃんが忙しい日だってあるだろうし、そんな日に息抜きで卓球やれば……」
「これ見ろ」
聖汰の質問には答えなかった夏希が、ブレザーの内ポケットから小さく畳まれたメモ用紙を取り出して聖汰に渡した。
「ん?『以後毎日麻雀』……」
メモに書かれた文字を読みきった聖汰が、汗で額を濡らした。
「必要最低限なことしか書いてないのがまた……怖いね」
「授業中に飛んできたんだよ」
「これって、俺も彼女に協力することになってるんだよね?」
「当然。今更」
「……それ、このメモの真似?忙しくなるなぁ」
2人は階段を登りきり、1年生のクラスが並ぶ最上階に足を踏み入れた。
「曖昧なのは嫌いだからな。これから毎日、ってんならきっぱり辞めるだけさ」
「そうだね。君はそういう奴だった」
2人は教室に入り、他の生徒たちより少し遅れて弁当を開けた。
「むっ。いつもより可愛い弁当だね」
「お前のその澱みに澱みきった目なら、誰がつくったかわかるだろ」
「澱んでないよ!秋穂ちゃんがつくったんでしょ……そりゃわかるよ」
「やっぱりわかった」
「そのタコさんウィンナー1個ちょうだいよ」
「彼女いわく、これの正式名称は"タコちゃん・おウィンナー"だ。ちなみにやらん」
「……」
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