幕開けの夕陽

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彼の名前は今藤 勇(こんどう ゆう) ちなみに名前をつけた彼の両親は新撰組ファンである。 彼の名前は両親の安直なギャグで決められたと言って過言ではない。 新撰組局長・近藤勇から漢字を頂き、ラストサムライになれと込められた名前は、彼を度々なやませる結果となった。 なぜなら彼はモヤシだったからである。 モヤシと言うのもなんだが、完全な草食系男子で、肌が抜けるように白く、サラサラとした色素が薄い髪に美の神がこの世に生まれてきたような超絶美形だった。 冷ややかな硝子細工のような美青年だが、標準の男子にしてはヒョロイ。筋肉もあまりついてない。 何より彼は文字通り《顔だけ》だった。 運動神経・学力…全てにおいて平均。 つまり外見だけ異常、中身は平凡な純朴な青年だった。 天は二物を与えない… まさにその通りだった。 彼は顔を抜かせば取り柄がない青年だ。 彼は自分が美形だと自覚していないから余計に劣等感を感じるらしい。 顔に自信のない奴からしたら《ふざけるな!!》と罵声されるに違いない。 しかし、これは価値観の違いのためどうしようもない。 彼の価値観は顔よりも能力的なものに重点がおかれており、彼の悩みは自分の身体に筋肉がつきにくいことと、何をやっても伸びない自分の学力だった。 また、外見面でも毛が薄く、将来ハゲるのではないかというひそかな悩みも抱えていた。 正直、彼はいろんな意味でもったいない男である。 そんな彼は当然小さな頃からそれなりにモテた。 が、女子に囲まれるというのはあるいみ恐怖で、彼は何故女子に絡まれるのか自覚していなかった… 2月14日になると家のポストにはチョコ、下駄箱にチョコ…机の中はたまた鞄の中にまでチョコレート… 彼は小6までイジメだと勘違いしていた。 そう…彼はどうしようもなく鈍感だった。 彼が女子に対してある種の恐怖を抱いたため、鈍感になってしまうのは仕方ないことだった。 そうそれは小学校五年生の時に遡る
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