プロローグ

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ドゴン! 夜の路地裏に轟音が響く。 壁に入る亀裂。 打ち込まれる豪腕。 その超絶な杭から必死に逃げる一人の男。 =涙と鼻水でグシャグシャになった顔を更に歪めながら その後を追う少女の姿。 白く色素を含まない頭髪。 =セミロングの銀線の如く 炎を宿した緋色の瞳。 一見華奢な体だが、その腕はプロボクサーのソレもかくやという程の豪腕。 可憐な唇から紡ぎ出される言葉には少々荒っぽさが残る。 「待てこら!ドロボウ!アンタを総計74回の万引きの罪で……ぶっ飛ばす!」 「ひ!ひいぃぃ!助けて…!殺さないでぇ!」 ドロボウと称された男は可哀想なくらい必死だ。 少女はそんな可哀想な男に、後ろからやけにリーチの長い拳を放つ。 =右ストレート 男の右頭部を掠める。 「うひい!」 ギリギリで当たらない。 というか当てていない。 やがて男に『自分は今、うまい具合に袋小路に誘導されている』という一抹の予感がよぎった。 だが時既に遅し。 気付いた頃には追い詰められていた。 角を曲がったら突然現れた壁。 まさに袋小路だった。
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