戦慄の売春宿

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ここはとある世界のとある国。 サファジット連邦国。 人と亜人と竜の住まう国。 種族の間に志の違いはあれど、これといった紛争も無く至って平和な国だ。 物語はその国の極東部、ルシフィウス自治区で幕を開ける。 「んっふっふっふっふ~!」 絢爛豪奢な部屋に何やら笑い声が聞こえる。 赤い革張りの二人掛けソファー。 ふかふかしたソレの上で一人の少女が寝っ転がりながら新聞を広げている。 少女がニヤニヤしながら紙面を眺めていると、老父が一人、彼女の死角から近付いてきた。 おもむろに口を開く。 「だらしないですぞ、アクル様」 「うわぁあ!」 ドタドタドタ! 突然の声にソファーから転げ落ちてしまった。 銀色の頭髪に緋色の瞳。 アクルと呼ばれた少女はついた尻餅に涙を浮かべつつ声の主に鋭い視線を向けた。 「バリク!いきなり声を掛けないでよ!ノックぐらいしてよね!」 喧々囂々。 非難を受けた老人――バリクはやれやれといった溜め息を吐きながら足元に落ちている新聞を拾い上げた。
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