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コツコツ…。
「なんだ…?」
クレスは妙な音が耳に聞こえたために起きた。
「今までにはなかった事だな…起きる時間が丁度23時間後で良かった。人なら…【こいつ】がなんなのか良く調べてもらいたいな…」
そう呟いたクレスは、床から体だけ起き上がると右腕をジッと見た。
最近ようやく分かった事だ…。
クレスの右腕は義手…それも鉄で出来た機械式の義手だ。
コツコツ…。
「近づいているのか?だがここには扉がない。どうにか気づいてもらうか。しっかし動かせないなら…重いだけだなこれは」
愚痴をこぼしつつ、ようやく立ち上がったクレスは鉄の義手を左手で持ち、まるで鈍器を使うかのように壁にぶつけた。
ガシャン…。
壁の材質は…『触った感じが右腕に似ているため鉄だろう』と思っていたクレスは迷う事なくぶつけ続ける。
「使えないなら…ただの…道具…だな…これは」
重い物を持つのはやはり疲れる…独り言が途切れ途切れになるのもうなずける。
ガシャン…ガシャン…。
コツコツ…。
「うん!?音がこっちに近づいてるのか?それにしてもなんの音だこれは?」
石と石がぶつかるような音…それがクレスの出した音に気づいたかのように近づいてくる。
チャンスとばかりに義手をぶつけるクレス。
「だ…じ…か?」
声が聞こえた…。
『やはり助けが来たんだな』と思ったが…壁の厚さなのか言葉が遮断されて聞こえない。
「あぁ?なんだって?」
クレスも負けじと大声を出すが…
「は…れ…い」
とやはり聞こえず、内容も分からない。
「終わったな…」
諦めかけた時、壁に異変があった。
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