ハロウィンの奇跡

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すっかり上がった雨上がりの夜空。 僕はベランダで空を見上げていた。 「……寝よう」 寝よう。 声に出して思うけど、なかなかそこから動けない。 男の子の言葉がこだまする。 『ただし、勇気が必要だ』 『勇気をくれたのは、お兄さんだよ。だから、きっと……』 勇気。 勇気を出せるだろうか。 「シン……」 か細い声が耳に届いた。 「ナミ?」 びっくりして、慌てて部屋を出た。 ナミはパジャマ姿で、泣いている。 「どうしたの、ナミ!」 もしかして、何か。 あの男の子が何かしたのか。 「シン、どうしよ……」 「ナミ?」 泣きじゃくるナミを宥めたいけれど、理由が分からない。 僕はそっと、彼女の手を握る。 「もしかしたら、男の子が……」 「え?」 「男の子、死んじゃうかもっ!!」 僕は、馬鹿だ。 何故気付かなかった。 あの子は。 あの日、ハロウィンの日。 猫を助けようとして、車に轢かれた。 僕が毎日涙を流して、無事を願った。 あの男の子だったんだ!
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