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「もったいない、もったいない。なんてもったいないんだ」
雨に濡れた、長めの栗毛を揺らしながら、呆れたように何度もため息をつく。
大きな琥珀の瞳がこちらを見る。
「な、何が」
「今日はハロウィンだよ?」
男の子はそう言って、ウィンクをしてみせた。
「子供たちのちょっとした夢の日だよ。イタズラが許される、自由な日だ」
なのに。
そう言って、男の子は笑う。
「お兄さんはなにもしない。好きなのに、なにもしない」
「う、うるさいなっ!」
ついかっとなって怒鳴った。
男の子はそれでも笑っていた。
「大丈夫、優しいんだよお兄さんは。ぼくは知ってる」
「え?」
知ってると言われ、改めてまじまじと男の子を見た。
こんな寒い日なのに、格好は何故か病院着。
ハロウィンの仮装だろうか。
「ふふ、いいよ忘れてて。さぁて」
男の子は愉快そうに語尾を弾ませた。
くるりと一回転。
帽子を被る。
カボチャの帽子。
「イタズラを。最上級のイタズラをしてあげる。君のために」
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