24人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
真っ白な病院の部屋で、きっとこの子寂しかったんだ。
「退院するまで毎日、来てくれたらしいよ。今もたまに、お母さんに連絡入るんだって」
男の子はくすぐったそうに、クスクス笑う。
「君は、ほんとうに今幸せ?」
「えっ」
「シンなら、きっともっと君を幸せにしてくれる」
真剣な男の子の表情が、痛い。
心を見透かされてる。
「ほんとうは、知ってるんでしょ」
それが何を指すのか、私は知ってる。
でも、聞きたくない。
「ねぇ、お姉さん。シンに会いに行ってよ。この日、今日だけでいい。ハロウィンの夜、ぼくに見せて。最後シンが笑う姿を」
男の子は、そう言って。
私の手を掴み、くるり、と回った。
「あっ!」
「お願い、ね」
無邪気な男の子の笑顔が消えた。
私はあっ、と思って、手を伸ばしたけれど。
吹き飛ばされた体ごと、その手は届かなかった。
最初のコメントを投稿しよう!