2/2
前へ
/20ページ
次へ
進学のために東京に来て4年が過ぎようとしていた。 もともと人見知りな私は、一人暮らしをはじめてからというもの、ますます孤独になっていった。 母からすすめられて、通っていた病院にも、最近は足を運ばなくなっていった。 何枚書いただろう。履歴書を書く手が止まる。 受けても受けても、出ない内定。 私はもはや自暴自棄になっていった。追いつめられていた。 父親には、就職出来なければ帰ってくるなと、言われていた。 帰ろうにも帰れなかった。 だんだんとたくわえは底をつき、私は夜の世界で働こうかと、クラブに電話までしたが、やはり、自分には無理だと思い、あきらめた。 食べ物と言えばパンの耳と砂糖水だった。 私はこうして精神のバランスを崩していった。 気づくと、私は天井を見上げて、横たわっていた。 どうやらベッドの上にいるらしかった。 辺りは暗く、夜だという事がわかった。 起き上がろうとしてハッとした。 何かが手足を締め付けていた。 私は取り外そうとして、ジタバタと体を動かしたが、もがけばもがくほど、体力が奪われていった。 そうしているうちに、また深い眠りに落ちていった。 目が覚めた私は、自分がどこかの個室にいる事がわかった。 いつのまに、私の手足を締め付けていたものは、なくなっていた。 その部屋には、鉄の柵があり、まるで、刑務所か檻の様だった。 私は、自分が何か悪い事をして捕まったのではないかと、不安になった。 すると、白衣を着た先生らしき人が部屋に入ってきて、私にわけのわからない説明をしだした。 それから、医者は私に聞いてきた。 「麻薬をやっていた事ある?」 私は首をふった。 私の尿から薬物反応が出ているというのだ。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加