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誠司は缶ビールを二本持って元の場所に座った。
「じゃあ乾杯ね」
小さなグラスが輝に手渡されて、翔子もグラスを掲げた。誠司は缶の蓋を開け、同じように掲げる。
輝はグラスを両手に持ったまま、目の前にあるグラスと缶を眺めている。
「さあ、輝もグラスを上げて」
翔子に促され、輝は逡巡してグラスを上げる。
「乾杯」
輝と翔子のグラスが高い音を立て、誠司のビール缶は鈍い音を立てた。輝は目を瞬かせながら、掲げたままのグラスを見つめている。翔子がシャンメリーを飲むのを見て、おずおずと口をつけた。
「……美味しい!」
輝は歓声を上げてグラスの中のシャンメリーを一気に飲み干した。おかわりを欲しそうに翔子を眺めたが、彼女は笑顔で首を振って見せた。
「食事してからね」
輝は頷いて、「いただきます」と両手を合わせた。
誠司はビールを飲みながら、二人の食事を眺めていた。輝の皿に盛られているから揚げは、食べ易いように全て一口大に切ってある。小さなオムライスまでついてお子様ランチさながらだ。
誠司も用意された料理に舌鼓を打った。誠司が食べたことのある彼女の料理は、煮物などの和食ばかりだったが、洋食もこなすのだと初めて知った。
食事を終え、輝は念願のシャンメリーを再び注いでもらっていた。炭酸の広がるそれを輝は楽しそうに眺めている。翔子は少しの間そんな子供を眺めていたが、テーブルを簡単に片付けてキッチンの下からケーキを取り出してきた。
箱から取り出されたケーキは、白い生クリームに真っ赤なイチゴが映えていた。中央にはチョコレートの家と、サンタクロースの形をしたメレンゲが乗っている。
「うわあ」
輝は大きく口をあけ、目を丸くしてケーキに釘付けになっている。その姿にやっと子供らしさを垣間見て、誠司は笑い声を上げた。
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