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「……彼女を呼びに行ったらね」  呟くように渡瀬が言った。 「輝君と中浜さんが二人で出て行ったって伝えたらね、彼女真っ青になって、コートも着ないで外に飛び出したんですよ」  翔子は輝がやっとことに薄々気が付いていたのだろうか。  だからこそ、伝える必要のない妹の母親殺しまで、この中に綴ったのかも知れない。  便箋の最後は、「ごめんなさい。今までありがとう」と、そう締めくくられていた。 「分かりやすい別れ話だ」  誠司は便箋と指輪を封筒の中に戻した。 「待っててあげないんですか?」  誠司は苦笑しただけで、渡瀬の問いには答えなかった。
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