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すると、金髪の少女が現れた。高貴な雰囲気を纏わせながら入ってきた彼女。そんな彼女はどこか、悲しそうな目をしていた。
あちらこちらで呻くような、感嘆の声が聞こえたが、彼女の表情は鉄のように全く動かない。凜として、まるで人形のような印象を受けた。
彼女が教卓へ一歩踏み出す度に、クラス中の男子が異様なまでにテンションを上げる中、クラス中の女子が嫉妬たっぷりの視線を向け続ける中、曽根川ひかるはそのどちらにも属さずに、ただ呆けていた。
呆けていた、といっても。別にみとれていた訳ではない。金髪の彼女のその瞳を視て、ちょっぴり自分の過去を思い出しただけ。
ただ、それだけ。
やがて、教卓の前正面に辿り着いた少女はクルリと向き直り、静かに息を吸い込み……初めてその唇を動かした。
「上之宮 玲菜です。皆さん、宜しく御願いします」
そして一礼。
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