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「ハイハイ~そろそろチャイムが鳴りますよ~」
右斜め前の扉から、推定身長180㎝の、やや茶色の入り混じった黒髪を立たせた(正確にはただの寝癖なのだが……)眼鏡をかけている男が気怠そうに教室内へ入ってきた。
彼の名は佐野涼之助。
僕達のクラスの担任である。
「聞いてますか~?席着いてくれませんか~?時間ないっすよ~」
ホームルームが始まるまで、あと一分くらいなのだが……。殆どの人が無視して会話を弾ませている。自分と愛流ちゃんは席に着いているが、海斗は未だに僕の前で立ち話をしている。
「何時までもガヤガヤしてたり、チャイムがなる前に自席に着かなかったりした場合…………。《白銀の聖槍》が眉間に襲いかかってきますよ?いいですかぁ?」
一瞬にして、全てのクラスメートは自らの指定された位置についていた。
やっぱりいつ観ても………………速いよなぁ。忍者顔負けの俊敏な動きを目の前で見せ付けられ、僕は苦笑すると共に呆れた。
《白銀の聖槍》(またの名を白チョーク)は。最早朝ノ宮高校の名物となりつつあるモノ。凄まじき速度で佐野先生が投げつける《白い悪魔》(またの名を白チョーク)のことである。
《白銀の聖槍》を目の当たりにしたのは、今年の四月。入学式直後のホームルームであった。
浮かれてはしゃいで。佐野先生の話を聞かずに、隣と親睦を深めていた男子二人組に向かった二つの閃光。
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