奇跡の代償

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男には、特別な能力があった。 それは、他人の苦しみや憎しみなどを司る悪魔を消す事が出来る。手を翳せば、相手から黒い煙の様に悪魔が発散され、消えてしまうのだ。 その力を使い、男は人を救う。始めは無償で救ってきたが、そのうち、救われた人々の中に、金品を差し出す物が現れた。男は断っていたが、差し出す人間は救う人間に比例してゆく為に、いつしか男は金品を要求することが当たり前の感覚になっていた。 こうして男は、宗教を作り、教祖として崇めたてられ、信者を貪欲に集め始めた。 男の宗教は次第に大きくなり、今では信者も全国で1万人程で、男の栄華も凄まじいものである。 男はそれでも金が欲しいと考え、信者を集めて自分の奇跡を見せつける事にした。 とあるドーム球場にを借り、そこに信者が全国から集まっている。 男が登場すると、割れんばかりの拍手で迎えられ、中央のステージに立つ。 『さあ、皆さんに奇跡を』 そう言うと男は、手を翳す。すると会場にいる信者から黒い煙が沸き立ち、会場中を覆う。すると男は苦しみだし、前のめりで倒れてしまった。信者全員が何事かと注目していると、倒れた男の背中が裂け、テレビや本に出てくるよな悪魔が出てきた。男は長年、黒い煙を吸い続け、そして今日、大量に吸ってしまった為に、体に溜まった黒い煙が形を成してしまったのだ。
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