479人が本棚に入れています
本棚に追加
「お客さん、起きて下さい。終点に着きましたよ。」
遠いところから声をかけられています。
「・・・え?」
頭がぼんやりしています。
ゆっくり目を開けました。
目の前には少し腰を曲げてしゃがみ込んで私を覗いている駅員さんがいました。
「起きましたね。ここ、終点ですよ。」
「え?!」
勢いよく起き上がりました。
慌てて周りを見渡すと車両の中には私しかいませんでした。
「ここはどこですか?」
慌てながら右往左往しました。
「△△駅です。」
「えっ?!すみません!」
私はショルダーバッグを肩にかけ、小さい手持ちカバンを持って座席から立ち上がって、急いで電車から降りました。
左右を見渡して、出口を探し、恥ずかしさのあまりそのままダッシュで改札に出ました。
目的の駅が終点という事もあって、気を許しすぎてぐっすり眠ってしまいました。
小さい駅の改札を出ると、都会とは全く違う小さいロータリーがありました。
私は肩にかけたショルダーバックからプリントアウトした紙を出して、場所を確認しました。
降りる予定だった駅に間違いありません。
私は最終目的地に向かうため、そのままタクシー乗り場に向かい、客待ちをしている一台のタクシーに乗りました。
「どちらまで?」
「□□旅館までお願いします。」
「分かりました。」
運転手さんはすぐに場所が分かったらしくメーターのボタンを押して車を走らせました。
私は恥ずかしい事をしてしまった駅から離れた事に安心し、大きく息を吐きました。
目的の旅館は調べた内容だと駅からタクシーで10分ほどの距離。
しばし見慣れない窓外の風景を楽しむことにしました。
あえて選んだこの場所。
人通りが少なくて私には全くなじみのない場所です。
都会とはかけはなれた雰囲気の場所ですが、私にとってはとても新鮮でした。
緑がいっぱいの道と、ちょっと昔風の家が点々と並んだ風景。
本格的に栽培している畑と田んぼ。見慣れない風景だけど、目には優しい色合いの風景でした。
少しだけ窓を開け、車内に外の空気を入れました。
目を閉じてゆっくり深呼吸をしてみます。
最初のコメントを投稿しよう!