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「一人で行けばいいじゃないで
すか。」
「一人旅者同志でせっかく知り合ったんだから、一緒に散歩でもして話しましょうよ。」
「・・・・・・。」
断る理由も見つからず、私はジュンスに誘われるまま散歩に出ました。
空気が綺麗な場所というのもあって、空を見上げると雲がなく、高く透き通っていて、都会では考えられないほどの数の星が明るく光っていました。
空気もすごく気持ちいい。
昼間とは違って少し肌寒いけど、すがすがしく思えました。
「空気がいいですね。」
ハスキーな声に段々慣れてきま
した。
「そうですね。」
街灯も少なく、周りが畑と田んぼだらけの道は舗装されておらず、少しデコボコしていますが、それも都会にはない風景で優しい感触でした。
「どうして一人旅ですか?」
「何となくです。」
「女性一人って怖くないですか?悪い人にひっかかるんじゃないかって。」
「あなたみたいな人に?」
「僕が悪い人に見えますか?」
歩きながら私の方に向き、自分を人差し指で指していました。
「いい人には見えませんけど。だっていきなり、僕を知らないですか?とか、有名人だとか・・・。自分から言う人っていい人には見えません。」
「本当の事なんです。僕を知らないなんて、びっくりしました。本当に僕を見た事ないですか?」
「ありません。」
「テレビとか見ませんか?」
「見ません。新聞を読むだけで精一杯なんです。」
「新聞にもたまに載りますよ。」
「それはおめでとうございます。」
私はかるく会釈をしながら言いました。
「宣伝のページとか見ないですか?」
「見ません。仕事とは関係ない事なので。」
私は今まで家に帰っても、テレビをつける事なく、短い睡眠を取る為に過ごしていました。新聞は朝仕事前に目を通して、世の中の事を少しでも頭に入れる情報収集の為に読んでいるだけです。仕事上、必要ない事は全て無視してきました。
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